2023.01.03
米連邦捜査局(FBI)は、高度に組織化されたサイバー犯罪組織が10代の子供に自身のヌード画像を送らせ、その画像を元に被害者の家族をターゲットにした恐喝行為を行っていると警告している。
FBIの調査によると、犯罪者らはヌード画像を送った後に自殺した子供の「性的な写真を世間に公開する」と、家族や近親者を脅し、金を払うよう要求している。この犯罪は、これまで報道されてこなかったが、フォーブスが入手したFBIの捜査令状には、フェイスブックのメッセージを通じて組織されたセクストーション(性的な脅し)行為を行うグループに関する調査の詳細が記載されていた。
専門家は、過去18カ月間にこのような犯罪行為が爆発的に増加し、被害者が自ら命を絶つケースが増えていると警告している。
FBIによるとセクストーションの被害者のうち、未成年の男性の自殺率が高く、被害に遭ってから数時間以内に自殺したケースもあるという。「犯罪者らに被害者に対する同情の念は一切ない」と、国土安全保障省(DHS)の特別捜査官のジム・コールはフォーブスに語った。
コールによると、これまでのセクストーション犯罪は主に、未成年者から性的な画像を得ることを目的とするものだった。しかし、近年は、ナイジェリアやコートジボワールに拠点を置く犯罪者たちが、純粋に金銭のみを目的とした事件を起こすケースが増えたという。FBIの捜査令状には、これらのセクストーション犯罪のほとんどがナイジェリアからのものだという記載がある。さらに、これらの犯罪者集団が高度に組織化されており、100台ものデバイスが置かれた24時間365日稼働する拠点で、複数の詐欺のオペレーションが同時に行われているとコールは述べている。
コールはさらに、これらの犯罪組織が、ロマンス詐欺などにも関与していると付け加えた。また、最近のある事件では、成人の被害者が自分のヌード写真が流出するのを防ぐために数十万ドルを支払ったケースがあったという。
しかし、こうした事件の被害者の多くは10代の若者たちだ。捜査当局は、7月にサウスカロライナ州で発生した17歳の被害者の自殺にも、これらの犯罪者が関与したと考えている。
未成年者をターゲットにした犯罪の相談窓口を主催する団体「National Center for Missing & Exploited Children(NCMEC)」のローレン・コフレンは、「若者は特に弱い立場にあるが、犯罪者は、若者の間でフィンテック系のアプリの利用が増えたことに注目している」と語る。
「サイバー犯罪者は綿密な調査を通じ、ターゲットのオンライン上の行動や、興味、連絡先などを把握している。そして、ターゲットが自殺した後のさらなるターゲットとなる被害者の家族の情報も把握している」と、コールは述べている。
コールによると、これらの犯罪は、これまでオンライン詐欺に厳しい態度をとってこなかった国々を拠点としており、現地の警察に十分な資金がなく、汚職が蔓延している場合は特に摘発が難しいという。「捜査当局は、ホスト国と良好な関係を維持しようと努めているが限界もある」と彼は述べている。
NCMECのコフレンによると、犯罪者集団はナイジェリアやコートジボワールを拠点とする場合が多いが、フィリピンやバングラデシュの犯罪組織にも同様の活動が見られるという。
さらに、米国人がこれらの犯罪に関与するケースも増えている。FBIの子供を対象とした恐喝犯罪を調査する部門が行った調査によると、米国人はしばしば マネーミュール(Money mule)と呼ばれる「資金の運び屋」の役割で、犯罪組織に雇われている。
これらのメンバーは、簡単に金儲けができるというふれこみで募集されることが多く、報酬の見返りに犯銀行口座や送金アプリのアカウントを作るよう依頼される。犯罪組織は、彼らのアカウントを経由して資金を受け取ることで、資金の流れを不明瞭にすることが可能だとFBIは述べている。
FBIの捜査令状には、フェイスブックから入手した、セクストーション犯罪への関与が疑われる2人のユーザー間で送られたメッセージの内容が記されていた。一方のユーザーのIPアドレスはナイジェリアのラゴスを経由したもので、もう一方はケンタッキー州を拠点とする、マネーミュールと疑われる人物のものだった。
ケンタッキー州の人物は、恐喝の被害に遭って自殺した14歳の少年について、「800ドルを失うことは、彼にとってあまりにも辛すぎたようだ。私は彼のことなど、まったく気にも留めないが」と書いていた。
2人はまた、米国の銀行口座や決済アプリへの送金について話し合っていた。ナイジェリアのユーザーは、相手がペイパルや米国内の個人間送金サービスのZelleを利用することを好んだが、なかでも特に、Cash Appの利用を勧めていた。
Cash Appは、フォーブスの別の記事でも売春やセクストーション関連の取引で利用されるアプリとして紹介された。このアプリは、ナイジェリアでは利用でないが、素早く簡単に資金のやりとりができるため、犯罪者のマネーロンダリングに使用されると警察は述べている。
Cash Appの運営元のジャック・ドーシーが率いるフィンテック企業のブロック(旧スクエア)は、この記事の公開時点でフォーブスの取材にコメントしていない。同社は以前、プラットフォーム上での犯罪行為を容認せず、疑わしい取引を監視するために数多くの措置を講じていると述べていた。
ペイパルの広報担当者のCaitlin Girouardは、「不正な金融取引や性的搾取に対してゼロ・トレランスのポリシーを持っている」とコメントした。Zelleの運営元のアーリーワーニングサービス(Early Warning Services)の広報担当者のMeghan Fintlandは、セクストーションを行う犯罪者たちの間で、同社のツールが広く使われているという指摘に、全く同意できないと述べた。
今回のFBIの調査では、これらのセクストーション犯罪が、より広範で暴力的な犯罪エコシステムの一部になっていることも示唆された。捜査令状には、2人の犯罪者が、この詐欺に関与したもう一人の女性の殺害計画を議論していたことが記されており、彼らのうちの一人は、「人を殺すことは怖くはない。捕まるのが怖いんだ」というメッセージを送っていた。
FBIは、この事件に関するこれ以上の詳細をフォーブスの取材に明かさなかった。容疑者は起訴されていないため、フォーブスは関係者の名前を伏せている。